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小城の家

デザイン 株式会社リアルクリエイション 小島 賢士
設計協力 h2Architect 蓮子龍美
構造設計 株式会社川崎構造設計 
照明設計 株式会社リアルクリエイション
施工   有限会社諸石工務店
撮影   アール・イー・エム 藪亀寛

プロジェクトの経緯

  •  小城の家はおよそ160年前に建てられた旅籠を、大事に使ってきた先代オーナーの家に、現オーナーである家族が移り住むために、増築および改築をほどこした2世帯住宅のプロジェクトである。2世帯ともなると、改築だけでは生活のための面積が足りないので、当然増築が必要になる。しかし問題は、この160年前に建てられた旅籠にある。およそ160年前ということは、2016年現在からすると1856年で江戸末期である。余談であるが、ハリスが下田に来航した年である。日本の建築における確認申請の歴史は浅い。建築基準法が交付されたのが1950年のことで、小城の家は基準法交付のおよそ100年前に建てられた建物で、当然確認申請などない時代に建てられたものである。
  •  問題は増築をする際、この160年前の建物を現在の法律にのっとった建物に補強や改造を施さないといけないことにある。おそらく壊せば一番安くすむであろう。しかし、このオーナーはそれを望まず、160年前の建物を後世のために残すことにした。素晴らしい英断である。そこで私たちは設計チームを組み、構造設計による建物の耐震診断と補強工事図作成し、そのとおりに施工して現在の建築基準法にのっとった建物に改修した。そしてその改修内容をもとに増築工事をおこない竣工をむかえることができた。
  •  デザインコンセプトは、素材そのままの良さを利用することであった。そのため古い部分は濃い木の色がでるが、新しいフローリングもとくに色合わせをせず、素直に杉の材料の良さを楽しむようにした。漆喰の壁と杉のフローリングの組み合わせである。建具も舞良戸で杉板をふんだんにつかっている。ナチュラルで素直な家ができたと思う。
  •  壊せば簡単かもしれないが、こうやって昔のものを保存し、後世に伝えられる家ができたことは、意義のあることであり、スクラップ・アンド・ビルドではなく、残していくことに価値がある社会になって欲しいと願うばかりである。
工事前の屋根裏部屋
 工事前の屋根裏部屋の様子。この部分を表しにすることを計画して、デザインのアイデアをおこす。このプロジェクトにおいての現地調査で、一番インスピレーションを受けた場所である。屋根裏部屋についた小窓から南面の明るい日差しが入り込んでいるのがよくわかる。
伝統工法調査
 今回のプロジェクトは、構造設計事務所による耐震診断が最大の焦点であった。既存の土壁部分なども体力として計算した。結果は現在の基準法にそぐわない結果になったので、バランス良く筋交いや構造壁を配置していくことにした。
伝統工法調査
床下の基礎部分も当然調査対象である。当時は礎石の上に柱を乗せるものであったため、基礎という概念がない。地震時には建物が動くというものである。むしろそれで良い。しかしこの建物の前面は4車線の大きい道路であるため、トラックが通行した時など、建物自体が縦に振動する現象が起きていた。今回の調査に基づき、大引から一旦撤去して、土間配筋を施し、コンクリートのべた基礎とした。
  耐震補強工事
一旦、壁仕上げなどを撤去して、昔の柱や梁に四方枠組みと筋交いを配置した。部分構造用合板の片面張りや両面張りなどを施している。とても難しく精度が求められる工事であるが、工務店のレベルがとても高かったのが、このプロジェクトを成功させた大きい要因の一つである。
  耐震補強工事
1階部分に構造用合板を張っている様子。そのほとんどが構造設計の指示通りの補強ができた。しかし改修工事の常であるが、イレギュラーも当然出てくる。判断に迷うこともあったが、皆で知恵を出し合い、的確な判断で施工を行うことができた。
 耐震補強工事
1階土間に打設したコンクリート。この工事のおかげで、前面道路を通るトラックによる建物の縦揺れは皆無になった。
 また、このオーナーは床下換気に気を使っていたので、とてもよく乾燥した床下で、蟻害もなく良好な環境を作り出していた。この建物が160年も経っていたことには、このことが大きい要因としてあげられるであろう。このことは、とても凄いことであると思う。
 
 新築部玄関
とても広い収納を確保している。お客様用と自分たち用の小上がりが特徴。間接照明で地明かりを確保している。土間の部分は透湿性樹脂舗装材。下足箱面材はシオジの突き板で柾目を使用している。  
 新築部ダイニング
東面が大開口になっており、とても明るいダイニングになっている。天井に木を使用しているが、これも杉材である。壁は珪藻土塗り
 
 新築部ダイニング
片流れの屋根形状部分はそのままに高窓から光と換気をとれるようになっている。3枚引き戸はリビングとの結界となる。奥に見える黒い柱や梁が古民家の部分でリビングになる。この新旧の邸宅のつながりは、エキスパンション・ジョイントでつながっている。エキスパンションは構造体が別々の部分につなげる箇所のことで、強度自体はない。
 改築部リビング
今回のプロジェクトの大きい目的の一つといっても過言ではない。それほどこの丸太梁の反りや伝統工法の小屋束や母屋は魅力的である。梁や桁の上に間接照明を設置して、天井面からバウンドした光が回り込むように地明かりのデザインにした。一度バウンドさせると光は柔らかくなる。そこにピックアップでスポット照明を設置している。この照明で好きなところをフォローするようにしている。
 改築部ロフト
昔の家は1階座敷の天井高さが高い物が多い。それは2階小屋裏を利用しているためで、現代風に言うとスキップフロアになっている。この部分を利用して、ロフトや収納を作った。リビングにつながった和室ロフトで、 寝転がったり座ってくつろぐ、とても楽しい空間になった。
 
 改築部リビング
この高窓が南面に面しているため、非常に豊かな光を室内に呼び込んでくれた。今まではこの窓は屋根裏部屋だけを照らしていた。屋根裏でこの窓から入ってくる光を見たときに、このような形になることは予想できてはいたが、丸太梁の形状とあいまって、予想以上の結果となった。
 改築部通路
この通路は一間ある。かなり広く確保したのは、子供達の勉強机を設置するためであった。ここで本を読んだり、宿題を片付けたりするよう設計した。
 
 改築部子供部屋
 女の子二人のための部屋である。将来的に中央で仕切れるようになっている。どうしても抜けない柱があったが、それもまた面白いところである。
 
 改築部子供部屋
男の子のための部屋。子供部屋はどれも4.5〜5畳程度で構成している。居心地の良い子供部屋は作らない主義である。子供部屋に入り浸りにならず、家族団欒の空間で一緒の時間を過ごしてほしい。
 改築部主寝室
旅籠時代の窓の高さにお気づきであろうか。眼下は長崎街道であった。つまり参覲交代などが行われていた道である。この部屋の丸太梁の一部のみ損傷が激しかったので、取り替えた。取り替えたがそれが分からないのは工務店の腕が良いからである。
 
 改築部主寝室
 この部屋にもロフトがある。納戸として使うか、書斎として使うかはこれから決めていくことであるが、どういった使い方をしても面白い使い方ができる。
 
 矩計図(拡大)
 このプロジェクトの矩計図である。1階座敷と2階ロフトの関連性がこの図で理解してもらえると思う。

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