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松浦の家

デザイン 株式会社リアルクリエイション 小島賢士
設計協力 ルーツデザインスタジオ
CG製作  モスグリーン
撮影   アール・イー・エム 藪亀 寛

 

板倉工法とは

 板倉工法は、筑波大学教授の安藤邦廣先生が考案した工法で、日本古来の住宅の良さである調湿性のある家で、健康的に生活出来る優れた家である。
 概要は4寸角(120mm)の柱に30mm厚の本実加工の杉板を落とし込んでいく工法である。構造が仕上げをなすので、部材効率がとても良い。自然、木工事が工事の大半を占める工法である。
 自然素材で囲まれて暮らしたい人向けの工法。調湿効果が高いため、結露やシックハウスのない家になる。日本古来の家であるため、夏涼しく、冬寒い家であるので、薪ストーブを推奨している。日本の気候に一番適した家と断言できる。
 余談ではあるが、福島に仮設住宅でこの板倉の家が建てられたが、他ハウスメーカーの仮設住宅より、この家に住みたい人が圧倒的に多かったのは、当然であるといえよう。

プロジェクトの経緯

 このプロジェクトに関わり、施主の話を聞き、日本古来の生活をしたいと言われた。たとえば板戸の下には段差のある敷居があり、土間のある台所やゴエモン風呂などである。つまり段差だらけの家ということである。走れば蹴つまずいたり、板戸は静かに閉めないとバンと音がする。時代と逆行していると言えよう。しかしこれは家が子供のしつけを手伝うということである。つまり「家の中を走ると危ない!」「戸は静かに閉めなさい!」という親の声が飛び交うということである。私たちの子供の頃がそうではなかっただろうか。このことで子供たちは美しい所作を覚える。今は扉を乱暴に閉めても音がしない。段差もないので転ばない。子供たちは所作を覚えない。便利なものは必ずしも良いものではないと、この施主と出会い実感した。そして今現在に必要な家は、こういった考えの家であると考えた。そしてこう思った。この施主に上辺だけの「和風」住宅は似合わないと。しかし現在の木造住宅の知識だけで図面を書くと、どうしても「和風」住宅になってしまう。そして「和風」住宅はコストがかさむのが悩みであった。
 そこで出会ったのが、日本古来の工法を復刻させた板倉工法であった。これだと確信した。その瞬間それまでできていた図面を全て捨てた。そして一から板倉工法を勉強し、図面を書き直した。板倉工法は構造と間取りが直結するので、一間(1820mm)スパンで間取りを考えないと納まらない。その板倉工法の図面もなんども書き直した。悪戦苦闘の日々が続いたが、完成を迎えた時、家の雰囲気が神社のそれに近く、とても崇高な気持ちになれたのを良く覚えている。板倉の家は今後も日本に増えていってほしい工法の家である。

  外観
  外観はシンプルな切妻屋根。一文字浅掛け瓦噴きで軒先は銅板で軽やかに処理している。板倉工法特有の真壁で木摺板の上城漆喰塗り。南側と東面に開いた平面構成。
アプローチ
アプローチはタイル貼りで、玄関ドアはガラスの格子建具。欄間も格子でデザインした。
玄関
玄関でありながら、そのまま土間は内部に続く。ダイニングに入る扉は敷居があって立ち上がりがある。ガラス戸のむこうに薪ストーブが見える。 
薪ストーブ
 薪ストーブの炎がゆらめくダイニングはこの家の中心に座する。板倉工法特有の杉材が神社のような静けさと崇高さを感じさせる。薪ストーブが燃える様は見ていて飽きがこない最高のアイテムである。
 台所
台所はモザイクタイルでレトロな雰囲気。薪ストーブがそばにあるので、薪ストーブを使った料理も楽しむことができる。当然台所は土間である。
 小屋組みを見る
構造がそのまま化粧としている。ダイナミックな吹き抜け空間である。電気配線はすべて碍子(がいし)によるものである。それは構造がむきだしのため、配線がすべて露出になるためである。壁の中の空洞がないため、スイッチの配線や位置にも注意が必要である。
 居間
居間は畳敷。家族が集う空間である。襖や床の間が杉材の木目とよくあっている。
 
 小屋裏
小屋裏空間はいわば構造的おまけ部分になる。梁の上に30mm厚の床材を乗せただけである。リーズナブルに空間を作り出すことができた。
 
東側 縁側